株式会社テクノエーピー
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株式会社テクノエーピー 放射線・放射能測定装置 設計・開発・販売
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第1回 新しい検出器

弊社テクノエーピーも創立より22年が過ぎ、放射線計測業界の方々にも本当にお世話になっております。

創業当時の放射線計測業界と比べると、弊社製品や他社製品も多種多様な計測回路、システムが開発されました。特にデジタル方式の計測回路は飛躍的に発展を遂げ、リモート設定、多チャンネル、低コストという恩恵がもたらされたと同時に“わかりにくさ”が発生してしまったかと思われます。


放射線計測回路のメーカー側として、少しずつではありますが情報発信をしていこうと思います。より理解を深めるキッカケになってくれれば幸いと思っております。



Fig. 1

ミリオンテクノロジーズ・キャンベラ社製のHPGe検出器(GC1018-7500SL)が納品されました。弊社での研究開発や出荷前検査でガンガン使用していきます。

今まで使用していたPGT(Princeton Gamma Tech)社製は購入から15年でとうとう使用できない状態になりました。何度か修理は行っていてその都度復活してきたのですが、今回はリーク電流の増加が収まらず、真空引きをしても復活しませんでした。

購入から液体窒素は切らさずに補充し続けてきたお蔭なのか、他のGeより長寿でした。帳簿を調べてみると15年で液体窒素のコストは約500万円でした。

奥に見えているエルボー(水平)タイプのHPGeはトランジスタリセットタイプです。主に高計数率の際、使用されます。(普段はほとんど眠っております..)一般的にはレジスティブフィードバック型が主流なので通常の性能評価にはこちらを使用します。



Fig. 2

納入されたGC1018-7500SLはPタイプ同軸型の検出効率10%です。

検出効率が10%はラインナップでもっとも低いです。昔は10%100万といわれていましたが、今はもっと値上がりしていると思われます。検出効率が低いということは結晶が小さいということであり、静電容量が少ないです。静電容量が少ないのでノイズが少なく分解能がよいケースがあります。

弊社では主に自社製品の研究開発、出荷検査に使いますので、検出効率よりも分解能が良い方がメリットになります。効率は検出器そのものに依存しますが、分解能は検出器と回路に依存します。検出器の素の性能を劣化させることなく処理できるかが、放射線計測回路の最も重要な役割です。

納品されたHPGeの分解能は工場出荷検査で1.33MeVが1.64keV、122keVが0.708keVでした。素晴らしい性能です。PGTでは絶好調時で1.7keVでしたがそれでも凄い性能だなーとおもっておりましたが..


Fig. 3 アンプ6μsのスペクトル

まずは、アナログ方式で分解能をチェックしました。ここまでの分解能ですと8kチャネルMCAでは解像度が足りないかもですね。16kチャネルMCAの弊社USB-MCAを取り出して試験してみることにしました。

HPGe→アンプ ST6μs(ORTEC製572)→MCA(TechnoAP製APG7300D)

線源はAm-241、Eu-152、Cs-137、Co-60です。計数率は1.5kcps程度で1h測定...

MCA(TechnoAP製APG7300D)の関数適合(GaussFIT)で分解能を測定したところ、122keVは0.707keV、1.33MeVは1.6keVでした。素晴らしい分解能です。この業界に20年近くおりますが、1.6keVとは今まで見たことがありませんでした。


Fig. 4 DSPとアンプのパルス整形の比較

次に弊社製品DSPを取り出します。フラッグシップモデルのAPU101です。

このDSPはオペアンプやらA/Dやら電源やらこだわり抜いたものです。それでも1.6keVという世界は経験がありませんでした。アナログに負けてしまわないかヒヤヒヤものです。

まず、Risetimeを設定します。オシロの画像は上段の青の波形がプリアンプ波形、黄緑が572のセミガウス整形波形、紫がDSPの台形整形波形です。

572の設定はST(ShapingTime)6μsですが、プリアンプの出力からガウス整形波形のピークトップに到達する時間は約14.1μsです。DSPの台形整形のRisetimeはピークトップまでの時間なので同様に14.1μsとしました。Flattopは0.6μs。(同軸型HPGeは0.6〜0.8μsをお薦めします。)



Fig. 5 DSP15μsのスペクトル

HPGe→DSP RT15μs(TechnoAP製APU101)

同様に線源はAm-241、Eu-152、Cs-137、Co-60です。計数率は1.5kcps程度で1h測定...

関数適合(GaussFIT)で分解能を測定したところ、122keVは0.672keV、1.33MeVは1.595keVでした。アナログと互角ですね。1.6keVをきったとは信じられない気持ちです。
アナログとの違いは低エネルギー側の分解能がDSPのようが良いようです。


Fig. 6 DSPとアンプのエネルギー分解能の比較

今度は計数率が高いとき、ST(RT)が短いとき、広エネルギーレンジの時など色々なパターンの試験をしてみようと思います。

素晴らしいHPGeが納入されたので、モチベーションがアップしました。

より良い製品が作れるように社員一同全力で頑張ります。応援の程どうぞよろしくお願いします。


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Last Update 2024/4/2