前回に引き続き放射線計測におけるデジタル信号処理(DSP)についてアナログのガウス整形と比較しながらお話ししたいと思います。
今回は高計数率時です。
同軸型HPGe検出器でガンマ線スペクトロスコピをする場合、通常はガウス整形で6μsの時定数(Shaping Time)で測定するのが最も分解能よく測定できます。計数率が高くなってくるとデッドタイムが増加します。
例えば入力計数率6kcpsではデッドタイムが20%を超えてきます。こんな時は分解能を犠牲にしますが、時定数を短くして高計数に対応します。
アナログのガウス整形だと弾道欠損の影響から短くできても2μsです。1μsにすると弾道欠損の影響が顕著になりスペクトルが左右非対称になって分解能が劣化します。これ以上の高計数率の際はアナログではゲーテットインテグレータ整形が有効ですがその記事は別の機会に書きたいと思います。
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Fig. 1 DSPとAMPのパルス応答の比較
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台形整形とガウス整形の比較をしてみます。
Fig. 1はプリアンプ(青)の信号に対するアンプの時定数2μs(緑)、DSPのRise time 4.4μs(紫)の波形です。
台形整形はガウス整形に比べてベースラインに戻るのが早いです。これは、次のパルスを正確に測る準備が台形整形の方が早くできるという事であり、出力計数率は台形整形が上回ります。
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Fig. 2 DSPとAMPの出力計数率の比較
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Fig. 2からもわかるようにアンプ、DSPともに入力計数率5kcpsまではほぼ直線です。
アンプは6kcpsぐらいから直線から逸脱していきます。DSPは20kcpsぐらいからですかね。アンプはMCAの変換時間(1μs)もデッドタイムとして加算されますので、思ったより伸びないです。
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Fig. 3 分解能の変化
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分解能は12kcpsぐらいまではほぼ互角ですね。それ以上になると段々と差が開いていきます。特に122keVの低エネルギーになると顕著です。
Fig.3よりDSPは、より時定数(Rise Time)が短く、特に高計数率の際が真価を発揮できることがわかります。これも堅牢なBLR(Base
Line Restorer)アルゴリズムがあってからこそと思います。
それでは、より良い製品が作れるように社員一同全力で頑張ります。応援の程どうぞよろしくお願いします。
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