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第9回 X線スペクトロメータSDD

 関連製品  XSDD50-07GR-SYS等 シリコンドリフト検出器 Silicon Drift Detector (SDD) システム

今回は弊社の製品で、X線スペクトロメータでよく利用されるSDD(Silicon drift detector)について解説します。

一般的なシリコンドリフト検出器(Silicon Drift Detector、SDD)は、エネルギー分散型X線検出器(Energy Dispersive X-ray Detector)の一種であり、半導体検出器です。従来のシリコン半導体検出器(Si(Li)検出器)に比べ、同じエネルギー分解能で、高計数での処理が可能です。さらに、ペルチェ素子での冷却による動作が可能であるため、液体窒素による冷却が必要ないので、検出器全体が小型かつ軽量です。SDDは、高純度シリコンで作られており、リング状の電極を配置しております。その電極によって発生したドリフト電場によって、X線により発生した電荷が移動するがその移動した電荷は、小さな収集電極によって集められます。収集された電荷量は、入射したX線に比例しているため、X線のエネルギーを計測することができます。

SDDのデザインは、同心円状に電極があり、その中心に収集電極があります。収集電極は外部に配置したFETと接続しており、電荷を電圧に変換・増幅します。リング電極の中心にFETを配して収集電極とFET間の静電容量の減衰させることにより、電気ノイズを激減することができエネルギー分解能が改善されています。さらにFETをASIC仕様にしたタイプはさらに分解能がよいです。走査電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、蛍光X線装置(XRFおよびTXRF)、X線吸収微細構造解析(XAFS)などの機器で使用されています。

テクノエーピーのシリコンドリフト検出器システムは、シンクロトロン放射光施設で研究がされているX線吸収微細構造解析(XAFS)用途で広く採用されています。SDD検出器が筒状の筐体にマウントされ、フランジ等で真空槽と簡単に接続できるようになってます。SDD素子が単素子のタイプと多素子(4/7)タイプが有り、さらに検出窓がグラフェンとWL(window less)に分類されます。多素子タイプであればその分、高感度、高計数を実現できます。


(Fig.1 単素子SDD検出器


(Fig.2 7素子SDD検出器

Fig.3は検出窓がグラフェンの場合とベリリウム窓の場合です。つい先日まで主流であったベリリウム窓でしたが、低エネルギー領域での検出感度はグラフェン窓の方が優秀です。


(Fig.3 ベリリウム窓とグラフェン窓の比較)

SDDのエネルギー分解能は特性X線Mn-kαのピーク5.9keVに対して定義され、およそ125〜130eVです。Fig.4はX線源であるFe-55でのスペクトルです。Fig.4での分解能は125eVで最高峰の性能になります。弊社に入荷するSDDも多少のバラツキが有り、平均すると128eVぐらいですので、125eVは当たり品ですね。


(Fig.4 Fe-55でのスペクトル)

弊社のSDDは1μsと比較的短いrisetimeで分解能が最良になります。Flattopはプリアンプの最大立ち上がり時間350nsに設定します。もっと短いrisetimeにして高計数計測することも可能です。特にXAFS測定の場合、高計数が前提なので300ns以下にすることもあります。


(Fig.5 1μs台形整形)

Fig.6は4素子SDDによるFe-55でのスペクトルです。4素子ともエネルギー分解能が127eVと特性が揃ってます。



(Fig.6 4素子SDDによるFe-55でのスペクトル risetime 1000ns flattop 350ns)


(Fig.7 4素子SDD(上下機構付の場合))

それでは、より良い製品が作れるように社員一同全力で頑張ります。応援の程どうぞよろしくお願いします。

参考文献
[1] Gordon,Gilmore, Practical Gamma-Ray Spectrometry, Johnwiley&Sons Ltd, 1995年
[2] Glenn F.Knoll, Radiation Detection and Measurement 4th Edition, Ohmsha, 2013年


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Last Update 2024/11/07